加藤茂孝

ユスティニアヌスの斑点は東ローマ帝国を衰微させ(帝國自身は 1453 年までわずかに余命を保ったとはいえ)、黒死病はヨーロッパの絶対王権や教会の中世的権威を崩壊させて近世への移行の橋渡しをした。致死率の高い感染症の大流行は、社会体制を揺さぶり、旧体制を衰弱化し、新体制を生み出すゆりかごにさえなり得るという事である。 しかし、自然はわれわれの不完全な知恵を超えたはるかに大きな存在である。ペストの縮小の原因が、果たして公衆衛生的改善のみで説明できるのかどうか? 広い意味で「生態系(エコロジー)の何らかの未知の要因」(竹田美文)があるのかもしれない。自然を謙虚に学ぼう。 人類と感染症との闘い(PDFファイル)